戦前の日本において、牛乳は国民の健康を支える重要な栄養源でした。特に子育てを支える女性にとって、乳の分泌を促すために不可欠な飲料として貴重な存在でした。

私の祖父はこのニーズに応え、千葉県市川市で「西原牛乳店」を立ち上げ、リヤカーを使って毎日3回、365日欠かすことなく自宅まで牛乳を配達しました。

祖父の取り組みは、地域の人々の健康を守るために大きな役割を果たし、戦前の日本における牛乳配達事業の基盤を築き上げました。

株式会社明治クッカーは、1973年に私の父が創業した自宅用の高級冷凍食品の配達を起源としています。1991年に冷凍食品配達事業が不採算となり、現社長の祖父が戦前から行っていた牛乳配達業に原点回帰をして、牛乳配達業を始めました。

当初から労働集約型のアナログな業界であったため、私は父の事業を続けるべきかどうか迷っていました。

しかし、牛乳配達の仕事はお客様と定期的に顔を合わせ、家族のような関係を築けるという日本の伝統文化ともいえる事業であり、その価値に私は気づき始めました。

2013年、父の余命宣告を受け、私は当時勤務していたコンサルティング会社を辞め、2013年8月に二代目として事業を継ぐ決意をしました。

会社は当時、経営的に非常に厳しい状況にあり、改革が急務でしたが、父の志を受け継ぎ、牛乳配達の価値を守りながら新しい時代に適応させることを目指しました。

2014年、私は新卒4名と第二新卒2名を採用し、若手の力を借りて組織改革をスタートさせました。

当時、売上は6000万円、営業利益率は1%未満という厳しい状態で、給与も十分ではなく、従業員は常に「赤字解消」という現実と向き合っていました。

それでも、私のビジョンに共感してくれた従業員たちと共に、少しずつ改革を進めていきました。

私の改革は、従来の業界の常識にとらわれないものでした。

配達回数の見直し、営業手法の変革、単価設定の再考など、従業員の幸せを第一に考えた取り組みを次々と実施しました。

業界の常識を壊したことで多くのハレーションがありましたが、牛乳業界のファーストペンギンとして改革を断行。その結果、売上と従業員数は約10年で700%成長し、会社の基盤を強化することができました。

2019年にはYouTubeを活用し、牛乳屋をDX（デジタル・トランスフォーメーション）した事例を元に発信し始め、2022年にはTikTokにも展開しました。

2024年10月現在、YouTubeのフォロワーは8万人、TikTokのフォロワーは18万人を超え、SNSを通じた発信が多くの人々に支持されるようになりました。

SNS発信を通じて、DX領域での全日本空輸様との業務提携や米国シリコンバレーのスタートアップへのDX支援等など、新しいビジネスの展開が進んでいます。

何より、牛乳の配達と営業をしている現場従業員が自社の変革をし、社内外のデジタル化やDXの推進に貢献し、動画メディア制作等の新たなスキルと企業へのご支援をしていることも、私が描いていた「誰もがあこがれる牛乳屋」の一部が実現しつつある証です。